豆は「しあわせ」のタネである

【静岡県清水市】周年えだまめ「駒豆」の産地へ(2)

*前回の投稿 その1から続きます。

小枝付き枝豆『駒豆(こまめ)

10月下旬、静岡市清水区駒越の「JAしみず南部営農センター 駒越営農拠点」に伺いました。温室・ハウス栽培でオールシーズン出荷される枝豆『駒豆』についてお話をお聞きし、ガラス温室栽培の現場を視察させていただきました。

その日も清水港に近い駒越には、強い海風が吹いていました。

JAしみず駒越営農拠点で、清水南部海岸地域の枝豆についてお話をお聞かせくださった拠点長の内田光展係長。お忙しい中にお時間を割いていただき、ありがとうございました。

小枝に付いた枝豆『駒豆』と、『手もぎ雅』という茶豆風味の枝豆をご紹介いただきました。

 

静岡県産 温室栽培 枝付枝豆『駒豆』

駒豆は清水区南部海岸地域にある駒越地区と、天女の羽衣伝説の三保ノ松原で知られる三保地区で栽培されています。

海風と砂地、これが駒豆を美味しくする由縁です。アカボクやクロボク土壌に比べ水はけが良い砂地土壌は、作物に必要な養分と水分だけを吸収し、味がのりやすくなるそうです。

一つのハウスや温室で年に3作、4作と枝豆を栽培~出荷されます。駒豆の最盛期は、イチゴやトマトの栽培が一段落して育て出荷する4月~6月。現在は年間通して約200トンの駒豆が出荷され、その7割をこの時期に出荷するとお聞きしました。

全国で枝豆の出荷が活発になる7月~8月は、土壌消毒のため畑を休ませるそう。

ビニールハウスやガラス温室で栽培するということは、大型機械が入れられず、手作業中心の栽培となります。枝豆のハウス・温室栽培は、手間がかかるのです。令和4年度は、三保~駒越地区で76戸の農家さんが、25haの温室やハウスで枝豆を栽培されています(1軒の温室やハウスの広さは、大きくて約300坪~450坪)。

周年栽培の駒豆品種は「サヤムスメ」を中心に採用されているとのことでした。

 

静岡県産 茶豆風味枝豆『手もぎ雅』

こちらはレンジアップ用として販売されている茶豆風味の枝豆『手もぎ雅』です。

駒豆が白毛の枝豆で、手もぎ雅は茶豆風味の枝豆です。品種は「ユカタムスメ」、時期により「湯上がり娘」や「神風香」も含まれるそう。

手もぎ雅を1袋分けていただきました。駒豆よりやや小ぶりで、茶豆風味と味わいが感じられる枝豆です。駒豆と手もぎ雅は、JAしみず のブランド枝豆として京浜市場および、県内の市場にも出荷されています。

 

枝豆栽培35年、瀧戸徹也さんの温室を視察

この地区で枝豆が周年栽培されるようになったのは昭和50年頃からで、昭和60年代に小枝を付けた状態の袋入り枝豆『駒豆』がヒットするようになり、令和になってようやく京都在住の私の口にも届きました。

トマトや茄子、きゅうりが年間を通して当たり前に出回るのですから、枝豆も今後は・・・ 今のところ枝豆の周年栽培は、全国でもこの地区だけ。駒豆は期待の枝豆です。

駒越営農拠点でお話をお聞きしたあと、駒豆を栽培する生産者さんのガラス温室を見せていただきました。

生産者の瀧戸徹也さん、視察に伺ったその日がちょうど満60歳、還暦のお誕生日でした。瀧戸さんの家では学生の頃から既に枝豆栽培をされていて、案内していただいた温室は築40年以上を経過した温室とのこと。「父がメロンを育てるつもりで建てた温室で、枝豆を栽培することになりました」と。

 

枝豆をこぎ、畑をうなう

熱がこもりがちな温室は、換気を充分に行い、朝に昼に豆の状態を見ながら水やりをするそうです。この日も朝5時半から枝豆をこいで(収穫して)、1つの温室を1週間くらいかけて「こぐ」と、次は、「うなう(耕す)」作業をします。

「こぐ・うなう」言葉を初めて耳にしました。方言ではなく、辞書に載る標準語だそうで驚きました💦

温室の畑には、白いうぶ毛が立った駒豆がうるわしく育っていました。

ハウスや温室育ちの枝豆は、露地栽培に比べ虫食いが少なく、キズ物も少ない。サヤが硬くなりすぎず、サヤの軟骨(サヤの内側に生える透明で薄いプラスチックのような内サヤ/五木命名)も出来にくいように感じます。

真冬でもフレッシュの枝豆が手に入るおかげで、冬~春のメディアからの仕事依頼も受けられるようになりました。有り難いです。

小枝は枝付き枝豆の名残。この小さい枝が付いていることで、サヤ豆に旨味成分であるアミノ酸を供給し続ける効果があり、食べる直前までおいしさを維持するそうです。

こんなふうに枝を残すのは、とても手間がかりだろうなと思います。

瀧戸さんは、朝穫りの駒豆をたくさん持たせてくださいました。

今回初めて、小枝を付けたままの状態で蒸し茹でにしていただきました。

ひとりの人間が35年も枝豆を作り続け、その記念すべき60歳のお誕生日にこいだ枝豆を味わわせていただけたことに、感慨ひとしおです。おいしい駒豆をご馳走様でした。

 

瀧戸さんの枝豆を含む駒豆は、こちらのサイトでも購入できます。

JAタウン 枝豆

https://www.ja-town.com/shop/g/g4303-edamame-komame-200g6p/

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豆・豆料理探検家
豆料理アドバイザー

五木 のどか

福岡県生まれ、京都市在住。個人事務所 who(ふー)所属。豆の原稿執筆、レシピ開発、販売促進などに携わる傍ら、豆好きな人を増やすため、豆料理の楽しさやおいしさ、使い方を伝える活動を展開している。 | 詳細はこちら
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